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私のキャリアに影響を与えたコンピューター・IT の定番書籍

現代は知らないことがあればすぐにインターネットで調べたり、AI に質問できる時代です。このような時代において本を読む必要はあるのでしょうか?答えは Yes です。なぜなら、検索をしたり AI に質問をするためには、ある程度の基礎知識が必要だからです。この記事では私のキャリアにおいて影響を与えたであろうコンピューター・IT の定番書籍を紹介します。

現代は知らないことがあればすぐにインターネットで調べたり、AI に質問できる時代です。このような時代において本を読む必要はあるのでしょうか?

答えは Yes です。なぜなら、検索をしたり AI に質問をするためには、ある程度の基礎知識が必要だからです。下地となる知識がなければそもそも適切なキーワードで検索できません。また知識として整理されていることを知らずに AI に質問をする発想すら生まれないかもしれません。

書籍は情報の最新性においてインターネットの情報には劣るものの、体系的に物事を学ぶための優れたリソースです。特に基礎的な概念を学ぶために非常に有用であると考えます。また、書籍はインターネットの情報に比べて、信頼性が高いことが多いです。なぜなら、書籍は一般的にその分野の専門家によって書かれ、多くの人のレビューを受けた後に出版されるからです。技術書の信頼性は著者のみならず出版社のブランドにも影響を与えます。そのため出版社の人間は会社の信頼性を守るために、書籍の内容を慎重に審査します。

この記事では私のキャリアにおいて影響を与えたであろうコンピューター・IT の定番書籍を紹介します。これらの書籍は、コンピューターサイエンスやソフトウェア開発の基礎を学ぶために非常に有用です。特に、これからプログラミングを学びたい人や、IT 業界でのキャリアを考えている人にとっては、これらの書籍を読むことが強くおすすめです。

  • Web アプリケーション
    • Web を支える技術 ―― HTTP,URI,HTML,そして REST
    • Web API: The Good Parts
    • 体系的に学ぶ安全な Web アプリケーションの作り方
    • Web アプリケーションアクセシビリティ
  • ネットワーク
    • ネットワークはなぜつながるのか
    • マスタリング TCP/IP 入門編
    • DNS がよくわかる教科書
  • データベース
    • 達人に学ぶ DB 設計徹底指南書
    • SQL アンチパターン
  • ソフトウェア設計・アーキテクチャ
    • Clean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計
    • Clean Code 達人に学ぶプログラミングの技術
    • Java 言語で学ぶデザインパターン入門
  • テスト・品質管理
    • テスト駆動開発
    • 単体テストの考え方/使い方
  • リファクタリング・レガシーコード
    • レガシーコード改善ガイド
    • レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める 9 つのプラクティス
    • リファクタリング
  • 開発手法・プロセス
    • エクストリームプログラミング
    • 継続的デリバリー 信頼できるソフトウェアリリースのためのビルド・テスト・デプロイメントの自動化
    • GitHub 実践入門─Pull Request による開発の変革
  • インフラ・運用
    • 新しい Linux の教科書
    • イラストでわかる Docker と Kubernetes Software Design plus
    • 入門監視
  • コンピュータサイエンス基礎
    • コンピュータはなぜ動くのか
    • プログラムはなぜ動くのか
    • コーディングを支える技術
    • アルゴリズム図鑑
    • キタミ式イラスト IT 塾基本情報技術者
  • AI・機械学習
    • LLM のプロンプトエンジニアリング
  • プログラマー論・思想
    • Clean Coder プロフェッショナルプログラマへの道
    • UNIX という考え方: その設計思想と哲学
    • 達人プログラマー
    • リファクタリング・ウェットウェア
    • ハッカーと画家

技術書分野別分類

Webアプリケーション

Webを支える技術 ―― HTTP,URI,HTML,そしてREST

Webを支える技術

誕生から 20 年で爆発的に普及した Web が成功した秘密はその設計思想にあります。HTTP, URI, HTML などの技術は、Web の基盤を支える重要な要素であり、できる限りシンプルで拡張性のある設計がされているのが特徴です。この本では HTTP, URL, HTTP などの Web の基礎技術の仕様の歴史や設計思想を織り交ぜて解説しています。そして Web アプリケーションを開発する際に設計課題として、REST の考え方をどのように取り入れるかについても詳しく説明しています。

現代の Web アプリケーション開発においては少し古い内容もあるものの、Web 設計の指針といった誕生当初から変わらない基本的な考え方を学ぶことができます。

Web API: The Good Parts

Web API: The Good Parts

前述の「Web を支える技術」でも紹介された REST の考え方を Web API でどのように実装するかを解説した書籍です。設計の美しい API は「使いやすい, 変更しやすい, 頑強である, 恥ずかしくない」という考えのもと、API をどのように設計し運用すればより効果的なのか、ありがちな罠や落とし穴を避けるにはどういう点に気をつけなければいけないのかを明らかにします。

体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方

体系的に学ぶ 安全なWebアプリケーションの作り方

Web アプリケーションのセキュリティは、開発者にとって避けて通れない重要なテーマです。この本では、Web アプリケーションのセキュリティを体系的に学ぶことができます。実際のサンプルアプリケーションを通じてどのように攻撃が実行されるのか、そしてそれに対してどのように防御するのかを実践的に学ぶことができるのが特徴です。

最新の Web フレームワークでは基本的なセキュリティ対策が組み込まれていることが多いですが、その裏側で何が行われているのかを理解することは非常に重要です。

Webアプリケーションアクセシビリティ

Webアプリケーションアクセシビリティ

Web 開発におけるアクセシビリティは、可能な限り多くの人が Web アプリケーションを利用できるようにすることを意味します。Web は開発思想として、基本的にすべての人が利用できるように設計されています。このことは Web の設計においてアクセシビリティが根底にあること、そして我々開発者はできる限りアクセシビリティを損なわないように開発する必要があることを意味します。

この本では、Web アプリケーションのアクセシビリティの基礎である HTML と WAI-ARIA を解説したうえで、Web アプリケーションで頻出する UI コンポーネントをアクセシブルに実装する方法やアクセシビリティをどのように組織に取り入れるかについて詳しく説明しています。

ネットワーク

ネットワークはなぜつながるのか

ネットワークはなぜつながるのか

ブラウザに URL を入力して Web ページを表示するまでの一連の流れの裏側で何が起きているのかを、TCP/IP, LAN, 光ファイバーなどのネットワーク技術を通じて解説した書籍です。個別の技術を見るだけではわかりにくい事項も、普段何気なく使っている Web の流れと照らし合わせながら学ぶことで、より深く理解できます。

ネットワークをはじめて学ぶ人にとってぴったりの入門書です。

マスタリングTCP/IP 入門編

マスタリングTCP/IP 入門編

ネットワークの基礎を学ぶための定番書籍です。ネットワーク技術を学ぶ上で避けて通れない TCP/IP の基本的な概念を、わかりやすく図解しながら解説しています。プロトコル、インターネット、ネットワークについての理解を深める最初の一歩として活用できます。

ネットワークは Web 技術を支える重要な基盤です。ネットワーク技術者を目指す人でなくとも、ネットワークの基礎知識を学ぶことは不可欠と言えるでしょう。

DNSがよくわかる教科書

DNSがよくわかる教科書

インターネットを利用する上で不可欠な DNS(ドメインネームシステム)の仕組みを解説した書籍です。DNS の基礎概念を体系的に学べるだけでなく、実務的な運用方法やトラブルシューティングの手法についても詳しく説明しています。

データベース

達人に学ぶDB設計徹底指南書

達人に学ぶDB設計徹底指南書

データベース設計はソフトウェア開発において非常に重要な要素です。ソフトウェアのプログラミング言語やフレームワークは月日が経つにつれてより新しいものに置き換わっていきますが、データベースの設計は一度決めてしまうと変更が難しく、数十年にわたって使い続けることもあります。データベースの設計は、アプリケーションのパフォーマンスや拡張性、保守性に大きな影響を与えるため、慎重に検討して行う必要があります。

この書籍はデータベース設計の基礎や実践ノウハウをやさしく学ぶことができます。論理設計の基本からデータベースの正規化、ER 図の作成、パフォーマンスなど、データベース設計に必要な知識を体系的に学ぶことができます。

SQLアンチパターン

SQLアンチパターン

SQL やデータベース設計を深く掘り下げ、データモデリングや SQL クエリのロジック、データ駆動アプリケーションのコード設計におけるアンチパターンを紹介し、それらを回避するための実践的な方法を解説しています。1 章ごとに 1 つのアンチパターンを取り上げ、なぜそれが問題なのか、どのように回避するかを具体的な例を交えて説明しています。

「マルチカラムアトリビュート」や「インデックスショットガン」といったパターンの名前を体系的に知ることが出来るのもポイントの 1 つです。書籍による学習では書籍の内容をすべて覚えるのではなく、知識のインデックスを作り後から参照できるようにすることが重要です。パターン名さえ覚えておければ、後から書籍を参照して具体的な内容を確認できますし、同僚とパターン名を共有することで、問題の共有や解決策の議論がスムーズに行えるようになります。

このように後から参照する知識を得るという学習方法は書籍を読むうえで抑えておくべきポイントの 1 つです。

ソフトウェア設計・アーキテクチャ

Clean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計

Clean Architecture

Clean Architecture は「ボブおじさん」と呼ばれるロバート・C・マーチン氏が提唱するソフトウェア設計の原則を体系的にまとめた書籍です。ビジネスロジックを外部の技術的詳細から分離し、保守性と拡張性に優れたシステムを構築するための設計思想です。

クリーンアーキテクチャと聞くといわゆる「オニオンアーキテクチャ」の図を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、クリーンアーキテクチャとして紹介されている図はあくまでクリーンアーキテクチャの 1 つの実装例に過ぎません。クリーンアーキテクチャの本質的な部分をぜひ書籍を手にとって学んでいただきたいと思います。

Clean Code 達人に学ぶプログラミングの技術

Clean Code

同じく「ボブおじさん」が著した高品質なコードを書くための指針をまとめた書籍です。読みやすく、保守しやすく、理解しやすいコードを書くための具体的な技法と原則を詳しく解説しています。クリーンコードの核となる哲学は「コードは人間が読むために書かれる」という点です。コンピューターが理解できるコードを書くのは簡単ですが、他の開発者が理解しやすいコードを書くためには技術と経験が必要です。

意味のある命名, 単一責任の原則, コメントの使い方, 段階的なリファクタリングなど、クリーンコードの原則を実践するための具体的なテクニックが紹介されています。

Java言語で学ぶデザインパターン入門

Java言語で学ぶデザインパターン入門

デザインパターンとは、ソフトウェア開発における共通の問題を解決するための再利用可能なソリューションです。1995 年に Gang of Four(GoF)によって体系化され、オブジェクト指向設計の分野で広く受け入れられています。主要なフレームワークでもデザインパターンが多く採用されており、私自身もデザインパターンを学んでからフレームワークが裏側で何を行っているのか考えるきっかけになりました。

この書籍は、Java 言語を用いてデザインパターンの基本的な概念と実装方法を学ぶことができます。UML を用いたクラス図やイラストによる解説も豊富なため、Java 言語に不慣れな方でも理解しやすい内容になっています。

現代ではフロントエンド開発などデザインパターンが必ずしも適用されない分野も多く登場していて、少し古い内容と捉えられることもあるかもしれません。しかし、デザインパターンがどのような課題を解決するために生まれたのか、なぜこの手法で解決できるのかといった考え方を具体的なパターンから抽象に昇華させることで、自身の設計力を高めることにも繋げられます。

テスト・品質管理

テスト駆動開発

テスト駆動開発

実装をする前に先にテストを書くというテスト駆動開発(TDD)の考え方を実例を通じて学ぶことができる書籍です。テスト駆動開発の本質は単に テストを自動化するだけでなく、ユニットテストとリファクタリングを両輪とした小さなサイクルを回すことで不確実性を制御し、不断の設計進化を可能にする手法であることです。

私自身もこの本を通じて、「良い設計とはテストを書きやすいコードである」という考え方を身にしみて感じました。テスト駆動開発という手法を直接採用するかどうかは別として、テストを意識したコードを書くことの重要性を学ぶことができます。

最近では小さなサイクルを回せることに注目して、AI プログラミングの文脈で TDD の考え方が注目されていることもあり、改めて TDD の考え方を学ぶことは非常に有意義です。

単体テストの考え方/使い方

単体テストの考え方/使い方

単体テストに関する包括的な書籍です。この書籍では単体テストを単なる「コードのテスト」ではなく、ソフトウェア設計の一部として捉え、長期的に価値のあるテストを書くための原則とパターンを提示しています。良いテストの 4 つの柱として挙げられている「リグレッションに対する保護」「リファクタリングへの耐性」「迅速なフィードバック」「保守のしやすさ」は単体テストを書くうえでぜひとも押さえておきたいポイントです。

ロンドン学派と古典学派による「単体」の考え方の違いと、それにまつわるモック戦略の違いといった単体テストの歴史や背景を学ぶことができるのもこの書籍の特徴です。

リファクタリング・レガシーコード

レガシーコード改善ガイド

レガシーコード改善ガイド

「テストがないコードはレガシーコードだ!」であると語られています。なぜならばテストコードがなければ現在の振る舞いが正しいのかどうかを確認できないからです。テストコード無しで変更するのは信じられないほどのスキルと明確な理解が必要になります。

この書籍ではこのような複雑で理解不能なレガシーコードをどのように改善していくかを具体的な手法とともに解説しています。レガシーコードを改善するためのリファクタリング手法や、テストコードを追加するためのステップバイステップのアプローチが紹介されています。

レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス

レガシーコードからの脱却

この書籍ではレガシーコードを単に古いではなく、「変更が困難で理解しにくいコード」として定義しています。このようなコードの保守と管理には多大なコストがかかるうえに、一度作ってしまったレガシーコードの質を向上させるためにははじめから質が高いコードを書くよりもはるかに多くの時間と労力が必要です。なぜならば、コードの質の高さはテストの書きやすさに大きく依存しているからです。コードを変更するためにはテストを書くことが不可欠ですが、テストを書ける状態にするためにはコードを変更しなければいけないというジレンマに陥りがちです。

ソフトウェア開発において、初めからレガシーコードを作りださないためのプラクティスを 9 つ挙げて解説しています。また技術的な手法ではなくチームの協力やコミュニケーション、プロジェクト管理の側面にも焦点を当てているため、技術者だけでなくマネージャー層にとっても読んでもらいたい内容となっています。

リファクタリング

リファクタリング

リファクタリングとは、外部的な振る舞いを変えずにコードの内部構造を改善することを指します。本書では JavaScript のコードをサンプルになぜどのようにリファクタリングを行うのかを具体的な手法とともに解説しています。

またリファクタリングを行う理由やリファクタリングをすべきではないタイミングなどといったリファクタリングの考え方についても詳しく説明しています。ビジネス的にどのようなメリットがありリファクタリングを行うべきなのかを語られるようになると、エンジニアとして一歩進んだ視点でソフトウェア開発に取り組むことができるようになるでしょう。

開発手法・プロセス

エクストリームプログラミング

エクストリームプログラミング

ケント・ベック氏によって提唱されたアジャイルソフトウェア開発手法の 1 つであるエクストリームプログラミング(XP)の基本的な考え方と実践方法を解説した書籍です。XP は変化を受け入れることを前提とした開発手法であり、顧客の要求変更や技術的な課題に柔軟に対応することを重視します。短期間でのリリースサイクルを通じて、継続的にソフトウェアの品質を向上させていくアプローチです。

ペアプログラミングやコードの共有所有や CI/CD, テスト自動化といったプラクティスは現代ではもはや当たり前のように行われているため、紹介されている内容が古く感じられるかもしれません。しかし、当時なぜそのような手法が必要とされたのかを理解することは、今行われてる開発手法の意味を改めて問い直すきっかけとなるはずです。

継続的デリバリー 信頼できるソフトウェアリリースのためのビルド・テスト・デプロイメントの自動化

継続的デリバリー

現代ではもはや必須となっている CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の考え方を体系的に学ぶことができる書籍です。継続的デリバリーとは、ソフトウェアを常にリリース可能な状態に保ち、いつでも本番環境にデプロイできるようにする開発手法です。この実現のために必要な技術・組織的な要素について解説しています。

継続デリバリーは市場での競争力を維持するために不可欠な要素であり、日々新しい機能を迅速に提供するための基盤となります。また近頃話題になっている AI プログラミングでは AI が素早く生成するコードを迅速にチェックするために CI/CD の仕組みが必要不可欠となっています。

GitHub実践入門─Pull Requestによる開発の変革

GitHub実践入門

GitHub を活用したソフトウェア開発の実践的な手法を解説した書籍です。初めてチーム開発を行う人に向けて Pull Request を活用した開発フローがなぜ重要なのか、実際にどのように運用すればよいのかを詳しく説明しています。

少々古い書籍であるため、GitHub の新しい機能について触れられていない部分はあるものの、Pull Request の考え方やコードレビューの重要性、チーム開発におけるコミュニケーションの取り方など、根本的な部分は普遍的なマインドセットとして学ぶことができます。

インフラ・運用

新しいLinuxの教科書

新しいLinuxの教科書

Linux はサーバーやクラウド環境で広く利用されているオペレーティングシステムであり、IT 業界で働く上での基礎知識となります。この書籍ではシェルの基本的な概念やファイルシステムの構造、ユーザー管理, プロセスジョブ, シェルスクリプトなど、Linux の基本的な操作と概念を体系的に学ぶことができます。

単にコマンドを紹介するだけでなく、「なぜそのように動くのか?」といった背景や仕組みについても丁寧に紹介されています。私自身はじめてプログラミングを学んだときにこの書籍を手に取り、大変わかりやすく感じたのを覚えています。

イラストでわかるDockerとKubernetes Software Design plus

イラストでわかるDockerとKubernetes

Docker や Kubernetes といったコンテナの仮想化技術について学べる書籍です。効果的にイラストを用いて、コンテナ周辺の技術について触れられており、初心者でも理解しやすい内容になっています。コンテナ技術に興味を持たれた場合には、この書籍を足がかりにより低レイヤーの技術について学んでいくことをおすすめします。

入門 監視

入門 監視

本書はシステム監視に関する基本的な概念と実践的な手法を解説した書籍です。なぜ監視が必要なのか、どのような指標を監視すべきかといった基本的な考え方から、メトリクス, ログ, トレースの違いや、それぞれをいつ使うべきかについても詳しく解説されています。

また監視において重要な部分はどのように運用するかという点です。アラートの設定や通知方法, オンコール体制, インシデント管理といった実務的な運用方法のプラクティスも紹介されています。現代では開発と運用を統合した DevOps の考え方が広まっており、監視はその中でも重要な要素となっています。システム開発において監視の原理・原則を理解することはますます重要になるでしょう。

コンピュータサイエンス基礎

コンピュータはなぜ動くのか

コンピュータはなぜ動くのか

ハードウェア, ソフトウェア, データベース, ネットワーク, セキュリティというコンピュータを使いこなすうえで必要な知識を体系的に学ぶことができます。これからプログラマを目指す入門者から、もう一度コンピュータの基礎を学び直したい人にまでコンピューターの仕組みについて学びたい人におすすめの書籍です。

これからの 10 年も通用する知識をみにつけることができる一冊です。

プログラムはなぜ動くのか

プログラムはなぜ動くのか

「コンピューターはなぜ動くのか」の姉妹書であり、プログラムがコンピューター内でどのように動作するのかを解説した書籍です。プログラムがメモリにロードされ、CPU がどのように命令するのかを多数の図を用いて順序立てて解説しています。

コーディングを支える技術

コーディングを支える技術

関数, 型, スコープ, クラス, 継承といった多くのプログラミング言語で共通して使われる概念や、一部の言語でのみ使われる概念がなぜ生まれたのかを解説した書籍です。この書籍ではプログラミング言語設計者の視点に立ち、複数のプログラミング言語を比較と歴史の観点から、各概念について俯瞰的な視点に立って解説しています。

アルゴリズム図鑑

アルゴリズム図鑑

アルゴリズムはどんな言語でも使われる基本的な概念であるものの、実務で使われることは少ないため、学ぶ機会が少ないのが現状です。多くの場合アルゴリズムの知識はプログラミング言語やフレームワークの裏側で使われています。ですがアルゴリズムの知識は効率的なコードを書くうえでの下地になるため、アプリケーションの開発者にとっても重要な知識です。

この書籍では、アルゴリズムの基本的な概念をイラストを用いて図解しているため、初めてアルゴリズムを学ぶ人にとってもイメージしやすい内容となっています。

キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者

キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者

「基本情報は実務では役に立たない」「基本情報を持っていても就職活動で評価されない」といった意見をよく耳にしますが、システム開発やコンピューターサイエンスの基礎を学ぶための教材として捉えると基本情報技術者試験はうってつけだと考えます。

基本情報技術者試験を受けるつもりがなくとも、一度網羅的に学習しておくことをおすすめします。基本情報技術者試験の範囲は広く、システム開発の基礎やコンピューターサイエンスの基礎知識だけでなく、プロジェクト管理や経営、企業法務といった分野も含まれています。これらの知識は普段コードを書いているだけでは意識することは少ないですが、一通り学んでおくことで、システム開発の全体像を理解できるようになるでしょう。

AI・機械学習

LLMのプロンプトエンジニアリング

LLMのプロンプトエンジニアリング

もはやソフトウェア開発において AI は当たり前の存在となりつつあります。LLM のポテンシャルを最大限発揮し、期待通りの制度の高いアウトプットを引き出すためには LLM の能力や特性を正しく評価、把握し、綿密な設計に基づいたプロンプトを組み立てることが必要です。この書籍ではまず LLM の仕組みを理解することから始まり、プロンプトにどのようなことを組み込み、どのような構造にすべきか本来の意味での「プロンプトエンジニアリング」を学ぶことができます。

この書籍を読めばプロンプトエンジニアリングが単なるテクニックではなく、LLM の特性を理解したうえで設計された緻密な思考プロセスであることが理解できるでしょう。これからの AI 時代において必読書と言えるでしょう。

プログラマー論・思想

Clean Coder プロフェッショナルプログラマへの道

Clean Coder

またしても「ボブおじさん」の登場です。Clean Coder は、プロフェッショナルなプログラマーとしての心構えや倫理、仕事の進め方について深く掘り下げた書籍です。単にコードを書く技術だけでなく、プロフェッショナルとしての態度や責任感、コミュニケーション能力など、ソフトウェア開発における人間的な側面に焦点を当てています。

プロとして「No」と言える勇気を持つという点が特に印象的でした。

UNIXという考え方: その設計思想と哲学

UNIXという考え方

UNIX 系の OS は 30 年にわたって長く使われてきたオペレーティングシステムです。なぜ UNIX はこれほどまでに長く使われ続けているのか?その設計思想や哲学を学ぶことで、ソフトウェア開発における基本的な考え方やアプローチを理解できます。

UNIX の設計思想の根底にあるのは「スモール・イズ・ビューティフル(小さいものは美しい)」という考え方です。1 つの機能に特化した小さなプログラムを組み合わせることで、複雑な処理を実現するというアプローチが UNIX では採用されています。これにより新しいコマンドを追加するときには、他人が書いたコードを拝借することできるのです。

1 つのツールには 1 つの責任を持たせるという設計思想は UNIX にとどまらず、様々なソフトウェア開発の分野で応用されています。

達人プログラマー

達人プログラマー

この書籍は「開発者」という人に焦点を当てており、コーディングにおける技術的な側面だけでなく、開発者としての心構えや思考方法、仕事の進め方についても深く掘り下げています。プログラミングの技術を学ぶだけでなく、開発者としてのキャリアや人生においても役立つ知識を得ることができます。

個人的には「あなたの知識ポートフォリオに対して定期的な投資をすること」という Tip が特に印象に残っています。プロフェッショナルなプログラマーとして成長するためには、長期的に成長していくことが重要です。その中の 1 つに「毎年少なくとも言語を1つ学習する」という項目があります。その目的は普段使用しているプログラミング言語と異なる言語を学ぶことで、普段の言語では当たり前だと思っていることが実はそうではないことに気づくことです。これにより、普段の言語の理解が深まり、より良いコードを書くための視点を得ることができます。私はこの考えを知ったときから継続して毎年新しい言語を学ぶようにしています。

リファクタリング・ウェットウェア

リファクタリング・ウェットウェア

アジャイルなソフトウェア開発においては、コードの品質を保つためにリファクタリングが重要な役割を果たします。ですがプロジェクトを本当の意味で改善するためには人間の脳(ウェットウェア)をリファクタリングすることが不可欠です。この書籍では認知科学, 神経科学, 学習理論, 行動理論などを駆使し、脳の働き方を紹介したうえで、脳を活かすにはどうすればよいのかを解説しています。

効率的な学習方法にも言及があり、そこではまず学習したい分野の経験を積んでから書籍やセミナーにあたり体系的に学習することが推奨されています。これは、実際の経験を通じて学ぶことで、より深く理解し、記憶に定着しやすくなるためです。

「ずっと悩んでいた問題が、帰り道で歩いている時とかシャワーをあびている時にいきなり思いつく」というよくある経験について能動的に呼び起こす手法が語られていたのが印象的でした。

ハッカーと画家

ハッカーと画家

この書籍は Y Combinator の共同創設者であるポール・グレアムによるエッセイ集です。本書は、プログラマー(ハッカー)と画家という一見異なる職業の間に存在する深い共通点を探求し、創造的な仕事の本質について考察しています。創造的な仕事に関わるすべての人にとって仕事への取り組み方や思考の枠組みを根本から見直すきっかけを与える一冊です。

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」という書籍でも直感と感性を磨くことの重要性を説いており、これらの書籍を読んでからは今まで興味を持たなかった芸術の分野にも触れる機会を増やすようにしています。

まとめ

この記事では、私のキャリアにおいて大きな影響を与えたコンピューター・IT の定番書籍を分野別に紹介しました。これらの書籍は、単なる技術的な知識の習得にとどまらず、ソフトウェア開発の本質的な考え方や原理原則を学ぶための優れたリソースです。

現代では技術の変化が激しく、新しいフレームワークやツールが次々と登場します。しかし、これらの書籍で紹介されている基礎的な概念や設計思想は、技術の流行に左右されることなく、長期にわたって価値を持ち続けています。インターネットの断片的な情報だけではなく、書籍を通じて体系的に学ぶことで、深い理解と応用力を身につけることができることでしょう。

また「達人プログラマー」で述べられているように、継続的な学習はプロフェッショナルなプログラマーとして成長するために不可欠です。新しい技術やトレンドに追いつくことも重要ですが、基礎をしっかりと固めることで、変化に柔軟に対応できる力を養うことができます。

一度にすべてを読む必要はありません。まずは興味のある分野から始めて、徐々に知識の幅を広げていくことをおすすめします。技術書は単に読むだけでなく、実際に手を動かして試してみることで、より深い理解を得ることができます。また、一度読んだ書籍も、経験を積んだ後に再読することで、新たな発見や気づきを得ることもあるでしょう。

これらの書籍を通じて、ソフトウェア開発の本質を理解し、より良いプログラマーとしての道を歩んでいくことを願っています。技術書はあなたのキャリアにおいて、貴重な資産となることでしょう。ぜひ手に取って、じっくりと学んでみてください。

記事の理解度チェック

以下の問題に答えて、記事の理解を深めましょう。

UNIX の設計思想について、記事中で紹介されている基本的な考え方は何ですか?

  • 大きく複雑なシステムを一度に構築する

    もう一度考えてみましょう

  • スモール・イズ・ビューティフル(小さいものは美しい)

    正解!

    記事ではUNIXの設計思想の根底に「スモール・イズ・ビューティフル」があると述べられています

  • グラフィカルユーザーインターフェースの重視

    もう一度考えてみましょう

  • 高性能なハードウェアの活用

    もう一度考えてみましょう