import type { ... } from "./module" とは何者何か
TypeScript のプロジェクトにおいて `import type { ... } from "./module"` という記述を見たことはないでしょうか? これは Type-Only imports and export と呼ばれる機能で TypeScript3.8 より導入されました。これは名前の通りモジュールから型情報のみをインポートするために使用されます。これは通常の利用用途ではあまり考慮する必要はないのですが、特定の問題に立ち向かうために利用されることがあります。
TypeScript のプロジェクトにおいて import type { ... } from "./module"
という記述を見たことはないでしょうか?
これは Type-Only imports and export と呼ばれる機能で TypeScript3.8 より導入されました。これは名前のとおりモジュールから型情報のみをインポートするために使用されます。これは通常の利用用途ではあまり考慮する必要はないのですが、特定の問題に立ち向かうために利用されることがあります。
型情報のみのインポートステートメントは削除される
まず、前提の知識として TypeScript から JavaScript へトランスパイル際に型情報は使われているかどうか問わずすべて削除されます。
// user/types.ts
export interface User {
firstName: string
lastName: string
}
// user/user.ts
import { User } from "./types"
export const getFullName = (user: User): string => {
return `${user.firstName} ${user.lastName}`
}
// main.ts
import { User } from "./user/types";
import { getFullName } from "./user/user";
const user: User = {
firstName: "John",
lastName: "Doe"
}
const fullName = getFullName(user);
console.log(fullName);
user/types.ts
ファイルではインターフェイス(型情報)のみをエクスポートしており、user/user.ts
ファイルでは関数(値)をエクスポートしています。
そして main.ts
ファイルにおいてそれぞれのファイルからインポートしています。これをトランスパイルすると以下のようなファイルが出力されます。
"use strict";
Object.defineProperty(exports, "__esModule", { value: true });
var user_1 = require("./user/user");
var user = {
firstName: "John",
lastName: "Doe"
};
var fullName = (0, user_1.getFullName)(user);
console.log(fullName);
要点としては、関数という値をインポートしている場合には var user_1 = require("./user/user");
としてトランスパイル後も残ったままですが、型情報をインポートしている部分はインポートステートメントごとまるごと削除されています。基本的に JavaScript の最終的なバンドルサイズは小さければ小さいほど不要なインポートステートメントを削除してくれるのは合理的です。
Type-Only imports and export が解決する問題
前述のとおり型情報のみをインポートしている場合にはインポートステートメントごとまるごと削除されるのですが、これが特定の状況下において問題になることがあります。例えば。isolatedModules
フラグをオンにしている、transpileModuleAPI
または Babel を使用しているなどの状況があげられます。
isolatedModules フラグによるエラー
isolatedModules フラグは TypeScript のコンパイラオプションの 1 つであり、これをオンにするとすべてのファイルを独立したモジュールとしてトランスパイルします。言い換えると、すべての ts ファイルが単独でトランスパイルできる必要があります。isolatedModules
フラグは、曖昧に解決された import を含むことを防ぎます。
isolatedModules
をオンにしている場合には、export
ステートメントをが含まれないファイルはコンパイルエラーとなります。
この挙動は Babel のデフォルトの挙動であり isolatedModules
フラグをオンにすることで Babel を安全に動作させることができます。
ところで、TypeScript では複数のモジュールのエクスポートを 1 つにまとめる手法が使われることがあります。(これは Barrel エクスポートと呼ばれます)具体例として前述のコードを使用しましょう。
/user
ディレクトリ配下に /user/index.ts
ファイルを追加します。このファイルでは /user
ディレクトリのモジュールをそれぞれ再エクスポートする役割を担います。
// user/index.ts
export { User } from './types'
export { getFullName } from './user'
これにより、main.ts
ファイルからは 1 つのファイルからのみインポートするようにまとめることができます。
// main.ts
- import { User } from './user/types
- import { getFullName } from './user/user
+ import { User, getFullName } from "./user";
しかし、isolatedModules
フラグをオンにしている場合に、型情報のみを再エクスポートするとコンパイルエラーとなってしまいます。
export { User } from './types' // Re-exporting a type when the '--isolatedModules' flag is provided requires using 'export type'.
export { getFullName } from './user' // これはOK
./types
ファイルには型情報のみが含まれており、トランスパイル時にこのファイルは取り除かれるのですがコンパイラはその情報を知ることができないので、何も存在しないモジュールをエクスポートしようとしているためコンパイルエラーとなるわけです。
この挙動は Type-Only imports and export
により解決できます。import
または export
に type
キーワードを付与することによりコンパイラにそのモジュールには型情報のみが含まれておりビルド時に不要なことを教えることができます。さきほどの型情報のみの再エクスポートは以下のように修正することでできます。
- export { User } from './types'
+ export type { User } from './types'
export { getFullName } from './user'
循環依存
他にも、循環依存を解決する目的でも使用できます。以下の例をご参照ください。
// Foo.ts
import Bar from './Bar'
class Foo {
constructor(
public name: string,
) { }
}
const bar = new Bar(new Foo("name"))
export default Foo
// Bar.ts
import Foo from "./Foo";
class Bar {
constructor(public foo: Foo) { }
}
export default Bar
上記例のようにファイル同士で互いにインポート・エクスポートをしている場合循環依存としてエラーとなる場合があります。この例においては、Bar.ts
ファイル内ではクラス Foo
をただ単に型情報として扱いたいだけで実際にランタイム上では循環依存は発生しえないです。
このような場合には import type
を使用することで問題を解決できます。
// Bar.ts
- import Foo from "./Foo";
+ import type Foo from "./Foo";
class Bar {
constructor(public foo: Foo) { }
}
export default Bar
クラスから型情報のみを利用する場合
TypeScript におけるクラスの例について考えてみましょう。クラスは設計時には「型情報」として扱われ、ランタイムでは「値」として扱われる性質を持ちます。
// User.ts
class User {
constructor(
public firstName: string,
public lastName: string,
) { }
}
export default User
// main.ts
import User from './User'
// ここでは型情報として User が使用される
const user1: User = {
firstName: 'John',
lastName: 'Doe',
}
// ここでは値(クラス)として User が使用される
const user2: User = new User('John', 'Doe')
ここで、import type
の注釈を使用した場合には User
クラスは型情報としてのみ使用されるため User
クラスを値として使用できなくなります。つまり、new 演算子でインスタンスを作成したりクラスを拡張して使用できなくなります。
import type User from './User'
const user1: User = {
firstName: 'John',
lastName: 'Doe',
}
// 'User' cannot be used as a value because it was imported using 'import type'.ts(1361)
const user2: User = new User('John', 'Doe')
// 'User' cannot be used as a value because it was imported using 'import type'.ts(1361)
class Admin extends User {
// ..
}
type Modifiers on Import Names
import type
構文には制限があり、値のインポートと同時に使用することはできず、1 つのモジュールから型情報と値どちらもインポートする場合にはそれぞれインポートを別に書かなくてはいけませんでした。
import type { User } from './User';
import { getFullName } from './User';
TypeScript 4.5 ではこれが解消され type Modifiers on Import Names により次のように書くことができるようになります。
import { getFullName, type User } from './user';
まとめ
import type { ... } from
は主にコンパイラに対してヒントを与える目的で利用されます。我々一般的な開発者にとって直接利益を与える機能ではないですが、とりあえず type
キーワードを付与しておくのがよいでしょう。